まず、「人は何のために生きるのか」という疑問が人間の頭をかすめるのには、いろいろな理由があると考えられます。いちばん単純な理由として、「知的な興味から人生の目的について疑問を持つ」ということがあげられます。人生の目的に限らず、「なぜ」「どうして」を連発するのは、人間にはいろいろな事柄を知ろうとする知識欲があるからです。
けれども、実はそれだけではないと思います。そこには、自分の存在価値がどこにあるのか、という問題が深く関わっているのではないでしょうか。社会の中での自分の位置づけや価値というものを、自分なりに納得している人は、それがどんなものであったとしても、「人はなぜ生きるのか」と深く考えることはあまりないかと思います。したがって、人間が人間として扱われていないと感じる環境に生きている人ほど、人生の目的について深く考えるのではないでしょうか。
もう一つ。「人はなぜ生きるのか」という疑問に対して、どうしてだれもが即答できないのか、という問題です。これは、第一の理由と関係している部分があります。つまり、「自分には価値があり幸せだ」と感じている人が、人生の目的について深く考えていないのだとしたら、答えを求められても当然すぐには答えられないはずです。逆に、人はなぜ生きるのかといつも疑問に思っている人は、答えが見つからないので捜し求めているわけですから、答えられないのは当然です。
しかし、世の中には、「そもそも人生に目的などない」と考えている人たちもいるのです。そういう人は、「何をやりたいか」という当面の目的について語ることができたとしても、人間そのものに何らかの目的があるという考えは持たないのです。
いっぽう、「人には何か目的があるはずだ」と考える背景には、人間は偶然に存在するのではなく、ある目的のために存在させられているのだという考え方がありま
ここまでお話しすれば、もうおわかりいただけると思いますが、聖書には、人間は神によって創られた存在として描かれています。つまり、聖書の教えには、神の創造された人間には当然、目的があるという前提があるのです。
創世記の中に記されている人間創造の記事によれば、人間には、「地に満ちて地を従わせる。すべての生き物を支配する」という命令が与えられています。素朴なことばで書かれていますが、今でも人間の生きる目的と深く関わっている命令だと私は信じています。神によって創られたほかのすべてのものとの関わりの中で、地に満ちて、すべてのものを神からゆだねられたものとして、管理し治めていくことが求められているのです。この原点が見失われる時に、創られた世界全体のバランスが崩れてしまいます。
さて、神様はこの使命を人間にお与えになった時に、だれか一人の手にすべてをゆだねられたのではなく、一人一人に与えられた才能が、互いに一緒に働く時に、世界を最も美しく治めることができるようにされました。
この使命を人間が正しく果たそうとしない時に、人間は生きる目的を見失ってしまいます。それぞれが、自分だけの目的を達成するためにほかの人の才能を道具としたり、自分の目的に合わない才能をないがしろにしたり、されたりする時、人間はどうして生きているのか、わからなくなってしまうのです。
私は、現実の世界で人間の目的について考えるのは、とても難しいことだとよくわかります。たいていの人は、この世界が神からゆだねられたものであるということを認めませんし、神に向かうべきすべての働きの方向が、人間に向かっているために、人の心はしばしば自己中心的な欲望に支配されてしまっているからです。さらには、一人一人に与えられた才能が人間の欲望実現の道具となったり、その欲望実現に役立たない人間が無視されたりしてるからです。このような世界ですから、生きる目的を見失っている人たちがいるとしても不思議ではありません。
Yさんのご質問の背景には、きっとこの世に対する失望感がおありなんだと思います。けれども、そのような絶望的な世界に、なお神から与えられた使命があることを確信して生きる生き方、一人一人に価値があると信じる生き方、それこそがキリスト者の生き方なのです。
山下 正雄 著「悩んでいないで聞いてみたら?」キリスト教Q&A シリーズ(いのちのことば社)より
迷っているとき、悩んでいるとき、苦しいとき…。そんなときは、聖書のこの個所を読んでみてください。
⇒ 孤独でさびしい
⇒ 悲しい、慰めがほしい
⇒ へこんで、立ち直れそうもない
⇒ 疲れた
⇒ 失敗できないことが目前に迫っている
⇒ 悪い習慣がなかなかやめられない
⇒ 決断できない
⇒ 健康を害している
⇒ 外見や人目が気になる
⇒ 不安だ。安心したい
⇒ ほしい物が尽きない
⇒ あれこれ心配して眠れない
⇒ 年をとるのが怖い
⇒ 死ぬのが怖い
⇒ 自分は価値がないと感じる
⇒ 人と比べて、自分なんてダメだ
⇒ 人が赦せない
⇒ やってはいけないことをしてしまった
⇒ 人に傷つけられた
⇒ 嫉妬を感じる
⇒ 人を愛したい
⇒ 友だちのことで悩んでいる
⇒ 自分の思い通りにいかない
⇒ ことばで人を傷つけてしまった
⇒ 夫婦関係がぎくしゃくしている
⇒ 子育てに不安を感じる
⇒ 本当に大切なことはなんだろう
⇒ 変わらないものなどあるのだろうか
聖書で語られる神の物語を見て、聞いて、知ってください。
© Mars Hill Productions
⇒ イントロダクション
⇒ 第1章:はじめに
⇒ 第2章:選択
⇒ 第3章:死をもたらす病
⇒ 第4章:約束の前ぶれ
⇒ 第5章:祝福となるために
⇒ 第6章:神の約束による民族
⇒ 第7章:神の道を歩むように召される
⇒ 第8章:約束された方
⇒ 第9章:イエスの働き
⇒ 第10章:神の愛と正義が交差する
⇒ 第11章:イエスは復活した
⇒ 第12章:イエスに従う者たち
⇒ エンディング